最強のふたり
もう一人のおばあちゃん
私にはもう一人のおばあちゃんがいる。
75になった今でこそ2ケタしか体重はないが、かつては100キロオーバーであった「フジコ・デラックス」(75)である。
そんな愛称がついてもなお、私たちを許してくれる、背中も心も広いばあちゃんだ。
デラックスは、母の弟家族とふるさと・山形で暮らしている。
そのおじいちゃんの葬儀以来、ずっと会えていなかったデラックスが、久々にやってきた。
デラックスは、長年巨体を支えてきたヒザが10年以上前から悲鳴をあげていて、杖なしじゃ歩けない。もともとテレビを愛してやまない超インドアっ子。3年前に愛するおじいちゃんをなくしてからは、いよいよ外に出なくなった。こちらに来たのは10年ぶりと言ったところだ。
もともと祖母とデラックスは仲がよい。
で、なんだか居心地がよいらしく、デラックスの来訪から早3週間が経つ。
デラックスは暇らしい。
このまま同居しちゃえばいいのに
でも、今私は、本気で二人が同居してくれないかな、と思っている。
お互い最愛の人を亡くして、立派な後期高齢者になって、再会してみたら、超イイ感じだったのだ。
両方とも旦那さまとは仲良しで、亡くしたタイミングも、当時は鬱状態になるほど悲しんだのも、一緒。だからそもそも、共感できる部分がまずあった。
そして、もう一つ。
祖母は、体は丈夫だけど認知症。
デラックスは、ボケてないけれど体が自由に動かない。
だから、お互いを補いあえる。
祖母一人では、薬を飲み忘れてしまう。
デラックスが言う。
私も薬を飲んでいるから、同じタイミングで飲みましょう、と。
デラックスが車に乗り込もうとすると、ドアを開けるのも一苦労。
そんな時、祖母が扉だけ開いて待っている。
別に、手を貸したりはしないけれども。
ふたりでひとつ
行ってしまえば老老介護なのかもしれない。
しかし、ふたりの場合は、凹凸がうまくはまった感じ。必要以上には助けない、さりげない優しさが感じられるのは、ふたりとも自分が介護されてきた身だからだろうか?
2人のシェアハウス、結構いい気がするんだけどなあ。
追記:デラックス、山形へ帰る
甲子園が終わるころ、8月の頭にやってきたデラックスは、9月半ばに帰っていった。
デラックスとしては、おじいちゃんといた場所にいたい、という気持ちもあるらしい。
そういう感情は、結婚してみないと、そしてなくてみないと、わからない部分なのかもしれない。